いきなり取り上げると「大泣き」も…段階的に調整を

家庭内で取り組みやすいのは、「ペアレンタルコントロール」を利用して、1日の使用時間に上限を設定するなど、子どものスクリーン使用時間を物理的に制限すること。親として「自分で制御、時間管理して欲しい」と望む気持ちはよく理解しています。そのようなご相談も数えきれないほど受けてきました。

泣いている男の子
写真=iStock.com/Melpomenem
※写真はイメージです

しかし現実的には、子どもの脳は、セルフコントロールを司る前頭葉がまだ十分に発達していないということ、そのため「自分の意思でスクリーンを使う時間をコントロールすることは難しい」ということを理解する必要があります。

「いきなりタブレットを取り上げると大泣きされる」「タブレットやゲームがなければ家庭が回らない」というご相談もよくいただきます。このような問題を抱えている場合は、段階的に使用時間を減らす工夫を考えてください。

例えば、「1日3時間→2時間半→2時間…」と少しずつ制限をかけるだけでも、子どもの脳への刺激量は確実に減りますし、家族全体のストレスもコントロールしやすくなります。実際に私が関わっている保護者の方でこの方法でうまくいった人が複数いらっしゃいます。

今からでも遅くない! 「前頭葉」の機能を育む方法

さらにスクリーンから離れている時間に、前頭葉の機能を活性化させる活動を取り入れることも重要です。具体的には「有酸素運動」や「マインドフルネス」が年齢に関係なく効果的であるとされています。

● コロンビア大学のYaakov Stern博士を筆頭とする研究チームが、20〜67歳の132人を対象に、6カ月間(週4回)の介入研究を行い、有酸素運動を行なったグループとストレッチ/筋トレを行なったグループとを比較した結果、有酸素運動を行ったグループでは実行機能(計画や意思決定に関わる能力)が有意に改善し、特に年齢が上がるにつれてその効果が大きくなることが分かりました。また、左前頭領域の皮質も増加することがわかりました。

● アメリカのイリノイ大学のCharles H. Hillman博士らの研究チームによる、7〜9歳の子ども221名を対象に、約9カ月間にわたって行われた調査では、放課後に運動をしたグループは衝動を抑える能力が約3.2%、注意の切り替え能力(認知的柔軟性)が約4.8%改善し、注意力や判断力に関係する脳波の振幅が有意に増加し、認知機能および脳活動の向上が認められたと報告されています。

マインドフルネス
米国ピッツバーグ大学(Taren, Adrienne A. MD, PhDら)の研究チームが、心理的苦痛レベルが高い成人35名を対象に、3日間の短期集中型マインドフルネストレーニングを行ったところ、注意力や自己コントロールなどに関係する背外側前頭前皮質と、その働きを調整する複数の脳領域との結びつきが強まることが確認されました。一方、対照群であるリラックスしただけのグループではこうした変化は見られず、マインドフルネスには脳の実行機能を高めるための神経回路を活性化する効果があることが分かっています。

運動もマインドフルネスもどちらも積極的に取り組むことができれば理想的ですが、実際は、マインドフルネスは退屈で苦痛だけど、運動なら楽しく取り組めているという子どもが多いことも付け加えておきます。

こうした対策は短期間で劇的な変化をもたらすものではありません。特にスクリーンへの依存が強い場合や、子ども自身の性格や家族の状況によっては、変化が思うように現れない場合もあります。

大切なのは「少しずつでもスクリーンタイムを適切に管理し、前頭葉の機能を刺激する活動を取り入れる」ことです。

立ち止まり、見極める視点を

私はドクターからADHD「グレー」の診断が出ているという方に対しては「もしご自身に心当たりがあるなら、先天的なものだと決めつけずに対処方法を模索する方がいいかもしれません」とアドバイスしています。もしあなたが「うちの子、ADHDかも……」と悩んでいるのなら、まずは一度立ち止まり、“本当のADHD”なのか、“勘違いADHD”なのかを見極める視点を持ってみてはいかがでしょうか。

同時に運動や遊び、マインドフルネスなどを取り入れることで、前頭葉をはじめとする脳の健全な発達をサポートすることができます。

どうか不安になりすぎず、前向きに取り組んでいってください。

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