吉原の遊女、誰袖(たがそで)とはどんな人物だったのか。歴史評論家の香原斗志さんは「教養が高く、吉原で最上位の花魁だった。旗本の土山宗次郎に身請けされるが、土山の上司・田沼意次の失脚を機に2人の運命は急転する」という――。
「第40回東京ガールズコレクション 2025S/S」のランウェイを歩く福原遥さん=2025年3月1日、東京都渋谷区の代々木第一体育館
写真=時事通信フォト
「第40回東京ガールズコレクション 2025S/S」のランウェイを歩く福原遥さん=2025年3月1日、東京都渋谷区の代々木第一体育館

吉原の花魁・誰袖とロシアをつなぐ点と線

田沼意次(渡辺謙)が側近である三浦庄司(原田泰造)の提案を受け、蝦夷地(北海道)を幕府の直轄領にして、ロシアと交易することを検討しはじめた。そして目的達成のために、いろいろな策を弄することになった――。

NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」の第21回「蝦夷桜上野屁音」(6月1日放送)では、そんな話が大きく展開したが、そこで意外にも強い存在感を示したのが花魁だった。福原遥が演じる大文字屋の誰袖である。

蝦夷地には金山や銀山も眠っているから、そこを直轄地にして交易すれば、幕府は大金を稼げる。それが意次らのねらいだが、その蝦夷地は松前藩が管轄している。だから、幕府の直轄領にするなら、松前藩の領地を召し上げる必要がある。そこで意次の嫡男の意知(宮沢氷魚)が、松前藩の「落ち度」を探すことになった。

意知がまず繰り出した場所は吉原だった。平賀源内の片腕だった平秩東作(木村了)から蝦夷地に詳しい人物として紹介された、勘定組頭の土山宗次郎(柳俊太郎)が花見会を行うので、そこに参加したのだ。ただし、意知は変装して「花雲助」と名乗っていた。

花見に続いて駿河屋で酒宴が開かれ、その席では土山の横に誰袖がいた。彼女は土山の馴染みの女郎なのである。そして、この2人は史実においても、馴染みどころではない関係になる。