いい睡眠をとるためには、何に気をつけるべきか。鳥取大学病院精神科助教の吉岡大祐さんは「時と場所を問わず、自分では制御できない眠気に襲われ、1日に何度も居眠りを繰り返してしまう疾患の発症のピークは、14~16歳と中高生の時期に重なる。授業中の居眠りを単なる睡眠不足ととらえてしまうと、発見が遅れるから要注意だ」という――。

※本稿は、鳥取大学医学部附属病院広報誌『カニジル 19杯目』の一部を再編集したものです。

疲れてベッドに寝る人
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必ずしも第3段階の深い眠りに入るとは限らない

なぜ生き物は眠るのか――。

このシンプルな問いに、多くの科学者が挑んできた。しかし、いまだに明確な答えは見つかっていない。

睡眠の計測
出所=『カニジル 19杯目

とりだい病院精神科の助教(取材時)・吉岡大祐は、「睡眠はヒトのような高等動物にとって不可欠なものです」と語る。

「すべての生き物は概日リズムの中で、エネルギーを取り込む“活動期”と、それ以外の“休息期”を持っています。特に私たちのように大脳が発達した高等動物は、深い睡眠をとって脳を休ませる仕組みを、進化の過程で獲得してきたと考えられています」

概日リズムとは、地球の自転に同調して約24時間周期で繰り返される、生体内の環境変化のことだ。“体内時計”とも呼ばれ、これにより睡眠と覚醒のサイクルがコントロールされている。

まずは睡眠のメカニズムをみていこう。

睡眠はひとくくりにされがちだが、「ノンレム(non-REM)睡眠」と「レム(REM)睡眠」という、まったく異なる2つの状態に分けられる。

ヒトは眠ると、ノンレム睡眠に入る。大脳皮質のニューロン(神経細胞)の活動が低下し、徐々に同期して発火する状態だ。ニューロンの+と-が同じタイミングで発火し、パソコンの「スリープモード」に入るようなものと理解するとよい。

「ノンレム睡眠には1~3の段階があり、数字が大きいほど眠りは深くなります。入眠直後にまず第1段階に入り、そこから徐々に深くなっていきますが、必ずしも第3段階まで進むとは限りません」

ノンレム睡眠が約60~90分続くと、脳は再び活動を始める。これがレム睡眠だ。

「よく知られているように、“レム”とは“Rapid Eye Movement”(急速眼球運動)の略称。まぶたの下では眼球がすばやく動いています。脳は起きているときと同じか、それ以上に活発に活動しているのです。ただし、脳と“感覚系”や“運動系”とのつながりが遮断されているため、身体は動かない」

身体が脳と切り離された「オフライン」状態のようなものだ。