NHK大河ドラマで生田斗真さん演じる一橋治済はどんな人物だったのか。歴史評論家の香原斗志さんは「8代将軍吉宗の孫で、一橋家の第2代当主。10代将軍家治の跡継ぎ問題の中で主導権を握り、息子家斉が11代将軍になったことで幕政に隠然たる影響力を持った」という――。
自殺未遂者がでた10代将軍家治の後継者問題
田沼意次(渡辺謙)の前で、ついあくびが出てしまった10代将軍徳川家治(眞島秀和)は、「すまんな、お鶴と夜更かしをしてしもうた」と語り、意次は「お励みのこと、なによりにございます」と答えた。NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢~」の第19回「鱗の置き土産」(5月18日放送)
お鶴とは、大奥総取締の高岳(冨永愛)が連れてきた、家治の亡き正室にそっくりな女性、鶴子(川添野愛)のこと。嫡男の家基(奥智哉)を失い、自分の血を引く後継がいなくなった家治だが、鶴子とのあいだに実子をもうけようと思い立ったのだった。
そこに急使が「上様、主殿頭様(意次のこと)、ご無礼仕ります」といって駆け込み、「先ほど西ノ丸にて、知保の方様が毒をあおられた由、上様に宛ててこちらが」と告げ、手紙を差し出した。家治の側室である知保の方(高梨臨)は、手紙におおむね次のようなことを書いていた。
このたび京都から、亡き御台所によく似た中臈を迎えたと聞いたが、結果、実の子ができれば、自分は徳川には無用の人間となるので、上様と自分の子で、いまは亡き家基のもとに行きたい――。